最近、都内の薬膳レストラン2軒でランチを食べる機会がありました。薬膳を学ぶ私としては、お店に食べに行くのも大きな楽しみの一つ。まず最初に行ったのが、青山の有名店「Essence(エッセンス)」です。お料理はオーソドックスな中華料理で、雑穀の入ったお粥や、二十四節気の薬膳スープがついた薬膳気分満載の内容でした。白きくらげや、カエルのコラーゲンなど、日本ではあまりなじみのない薬膳食材を使った料理が人気のよう。プリフィクスのメインは、「マーボ豆腐」や「豚肉と野菜の炒め」など、案外ふつうの中華ながら、ランチのドリンクにはバラや芍薬のお茶があり、ただの中華とは一味違うお店でした。
もうひとつは、「旬穀旬菜(しゅんこくしゅんさい)」というカフェ。ロート製薬のスマートキャンプという施設内にあるアットホームな店です。ご覧のとおり、メニューは和風な家庭料理風。私が食べたのは、体を温める鮭と、血液の巡りをよくするレンコンなどを使った“冷え改善”&“巡りUP”のメニューでした。そのほかに、もう1種類の定食メニューとカレーライスのランチがあり、それぞれ、体にどう効くのかという簡単な解説がついています。薬膳というと、「中華料理」「スパイスや生薬を使う」というイメージがありますが、このメニューを見ると、家庭料理でも薬膳を実践できることがよくわかります。
対照的な2つのお店で食べ、私は、今、日本には2タイプの薬膳があることを改めて感じました。
1つは、クコの実やナツメなど、いかにも薬膳らしい食材を取り入れたわかりやすいお料理。中国や台湾に旅行したような感覚が味わえますが、「じゃあ何にいいの?」という薬膳の神髄にはあまり触れられていないケースも多々あります。
もう1つは、日常、私たちがスーパーで買える食材を、薬膳の考え方で組み合わせたお料理。特殊な食材は使っていないので、「これが薬膳?」と感じますが、「温める」とか「潤す」とか、薬膳的目的にかなった内容になっています。
どちらのタイプも、薬膳のよさを多くの人に感じとってもらうというコンセプトは一緒。ただ、打ち出し方が全く違います。実はこのあたりが、一般的な薬膳のイメージをぼやかせてしまうのではないかと、感じてなりません。